(垢説)なぜ、三菱スペースジェットが?(規格と航空科の話)

国内の多くのミリオタさんやら、軍事評論家、そらオタさんの皆さんは

「三菱スペースジェット(以下MSJ)は国交省やFAAに邪魔をされた」

「MSJを作った連中はYS-11の魂を忘れた」

「日本の防衛力が足りない」

という意見をお持ちならば、それは辞めたほうがいい。

 

私は航空機を全て覚えているわけでも無いし、FAAのライセンスも無い、メガネは航空身体検査証明は維持している位である。

日本の航空局が必要としている航空無線通信士と第一級陸上無線技術士という苦労の資格しか持っていない。

まず、結論から言うと、「米国に会社を移して米国で生産し名古屋は支社という形にする。何より重要なのはBoeing社に社員を出向(留学)させればよかった」

という点である。

私は大学で重工からBoeing社に出向し帰ってきた鬼教授に図面やMIL規格の何番を使いなさい!と指示され、一階の図書室にMIL規格の番号を頼りに分厚いバインダーを調べた。しかも英文で書かれてあるので辞書を持ちながらメモ帳に書いては製図室に戻り、怒鳴って発狂した人もいた。鬼教授の講義のノートの一例には

「1974年には損傷許容設計を行うための詳細な要求事項を定めた「航空機損傷許容要求事項」を発行した、FAAは1978年12月民間輸送に関する疲労の規定すなわちFAR25.571の改訂を行った」

FAR(Federal Aviation Regulation)という規定をクリアしなければならないが、「FARの通りにやってください」 

という「指導」をうけた。また、米国航空宇宙学会(以下AIAA)の教科書

「Global Aeronautical Cominications、Navigatin, and Surveillance(CNS)」

という国際航空航法監視通信という無線機の教科書には「ARINC(Aeronautical Radio Incorporated)航空無線会社(規格)」というのがあり、まさにスペックだらけである。

しかし、逆に考えれば「このスペックを満たしていればOKですよ」という明確で詳細な規格が在るため、ベトナム戦争では武器の開発が「民間企業」でも可能になったのである。そのため武器のコストが下げられた。米軍の「兵站」は民間企業がやっている。

簡単に言えば、民間企業の競争原理に委ねて、初めて成功したのである。

 

このような「超専門的な講義」を受けた同期はBoeing社に行ってB787のネーミングのアンケートを私にくれた。彼は口は悪いが名古屋で暮らしている。

 

しかし、これでも鬼教授の内容は「基礎」であり、鬼教授の折角の重工の話を断ったが一つ約束をさせられた

「Aviation Week Space and Technology誌は絶対に読み続ける事」

これはAIAAの先生にも言われた

ではMSJはfailかどうか?Aviation Week誌のコラムには最後にこうあった

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/daily-memo-mitsubishis-spacejet-decision-ends-japanese-civil-oem

Piedmont Airlines became the largest international operator of the YS-11 with 21 aircraft. SkyWest and Mesa had even ordered 150 SpaceJets at some point. When Piedmont’s enthusiasm for the aircraft remained a singular view, the prospects of the YS-11 program deteriorated. As for the SpaceJet, getting to that stage would have been considered a great success.

「ピードモント航空は巨大な国際線にYS-11を21機使い、スカイウェスト、メサ航空は150機の(三菱)スペースジェットを注文したいくつかの点には、ピードモント航空が熱中してこのYS-11航空機しか目が行かなかった事に関係がある、YS-11の提案プログラムの見通しは衰退をしてしまった。スペースジェットにも、この際、大きなYS-11の成功談を考えるべき段階を得たのではないであろうか。」

とある。

航空機設計という社運をかけたプロジェクト多くの人を必要としているが、やがて別の仕事に戻っていく。機械設計の派遣会社で正社員になり、そこから出向する、そして更に出向しBoeing社へと行く、まさに鳥の様に飛んでいかなければならない。ところがマスコミはそれを二重派遣と勘違いしてバッシングをして、重工で正社員になり出向というハードなチャンスしか無くなった。

しかし、最後に提案したいのは日本はサプライヤーとしてはジャムコなど決して悪くはない、航空宇宙工学という「研究機関」としてJAXAは凄い。しかし、航空機設計者は「航空機の医者」に近い、しかもパイロットのミスまでも「いけません!」と防がなくてはならない。

旅客機になると限界まで悩まされる。片方のエンジンが火が吹こうが、±3[G]が来ようがビビってはならない、あしたのジョーで主人公は減量の為、血液を抜いてまでWeightを削るが、我々はリブ(骨)まで削る。だがそれはカスタマーからのコスト要求とFAAとそのスペックの板挟みの運命である。

「超専門的な旅客機講義」をやってくれる大学は日本にはほとんどないが、この様なOJT大学を増やして行けばいい。勿論、大学は研究機関であるのか、企業OJT校であるべきなのか。私は結局両方の学校に行ってしまい、良い経験だったと思う。

 

「軍事技術への転用だ」

と訓たれて罵る人間がいれば、

「逆ですね、MILスペックって言いましてね、軍用規格から民間へ入っているんですよ。水面に石が跳ねる角度は6°です、この航空機は3°ないし3.5°で滑走路に着陸します。」

と言えば終わってしまうが。

「軍事技術ってなんだい?図で説明してくれよ」

と鉛筆でと紙を渡して。あくびをしていると思う。